レアメタルとは

 レアメタルとは、非鉄金属の中でもその存在が稀であるか、またはその生産が経済的・技術的に困難な金属を総称したものです。これらの元素は、種々の製品中には少量しか含まれませんが、極めて重要な機能を担う材料として幅広い産業分野で利用されています。レアメタルの需要増加に伴いそれらを含む天然資源は年々減少しています。供給の安定化に向けてレアメタルを含む廃電子機器など(都市鉱山)からの有価金属のリサイクルが注目されています。

 溶媒抽出法

 溶媒抽出法は水相と有機相間の溶解度差を利用して溶質を分離する方法で、金属の分離回収技術として工業的に広く利用されています。水溶液中の金属イオンを有機相に抽出するには、金属イオンと反応し有機相に分配しやすい化学種を形成する抽出剤を、有機相中に溶解しておく必要がありますが、この抽出剤の性能が分離効率を決定する大きな要素となります。その選択によってさまざまな資源から有価金属を高効率に分離回収、精製、濃縮することが可能になります。

 新規抽出剤の開発

従来の工業用抽出剤では分離が難しい金属がまだ多く有ります。最近、私たちはアミドとグリシンを配位構造に持つ新規抽出剤D2EHAGを開発しました。この抽出剤の分子設計には、実用化のために重要な要素(目的金属への親和性、逆抽出性、有機溶媒への溶解性など)を取り入れています。これによって、これまで分離が難しかったNi, CoとMnあるいはScとLanthanideの分離を効率的に行うことが可能になりました。新規抽出剤の抽出特性を評価し、これを用いたレアメタルの高効率分離プロセスの構築を行っています。

Y. Baba, F. Kubota, N. Kamiya, M. Goto, Ind. Eng. Chem. Res. 53, 812-818 (2014)
Y. Baba, A. Fukami, F. Kubota, N. Kamiya, M. Goto, RSC Adv., 4, 50726 (2014)

 イオン液体

イオンのみからなる室温で液体のイオン液体が、有機溶媒に代わる溶媒として注目されています。イオン液体は、蒸気圧が小さく、難燃性であることから、グリーンな溶媒と言われていますが、抽出相として有機溶媒よりも優れた性能を示す例が報告されています。私たちは、合成が可能で、構成イオンの組み合わせによりその物性を様々に調整できるという、その特徴を生かしたイオン液体抽出システムの開発を行っています。

F. Yang, F. Kubota, Y. Baba, N. Kamiya, M. Goto, J. Haz. Mat., 254, 79 (2013)